リスク分散
『投資の基本』のページでも、リスクは不確実性だとお伝えしています。
この不確実性について、具体的に考えていきます。
平常時、好景気、不景気等、プラスの要因とマイナスの要因の想定されるシナリオで得られるリターンの幅がリスクです。
一つのシナリオが起こった時にある投資はプラスに、同じシナリオでも別の投資ではマイナスになるような状況だと、マイナスにプラスが相殺されトータルでプラスになればリスクをヘッジ出来るということです。
例えば、円高になると輸入品が安く買える一方、輸出品の売上は下がります。
株を購入する際に輸入をして国内に販売する会社の株と、国内で生産をして海外で輸出をする会社の株を購入すれば円安に振れても、円高に振れてもリスクを相殺することが出来ます。
他にも景気に売上が敏感な会社(シクリカル銘柄)と景気に鈍感な会社の株(ディフェンシブ銘柄)を購入したり、というようなシナリオに対して逆の動きや違う動きをする投資をすればリスクが分散出来るというのがポートフォリオでのリスク分散の考えです。
リスクを考える際の一つの考え方として、下記のような式があります。
トータルリスクσp2 = 市場リスクβ2σM2 + 非市場リスクσεp2
難しく感じるかもしれませんが、安心してください。
基本的に実務上で上記の式は使いませんが、考え方は大切なので、考え方だけ覚えてください。
上記の式は、難しく感じますが、単純にリスクは市場が関係するリスクと市場には関係ないその投資個別のリスクを足したものだと思ってください。
ポートフォリオで、リスクを分散させるというのはこの市場リスクの話です。
非市場リスクは投資個別のリスクなので分散させることは出来ません。
資産個別のリスクは、資産個別にリスクを小さくするということです(例えば、地震に備えて火災保険に入ったり、孤独死に備えて孤独死保険に入ったりなどです。)。
この市場リスクが、ベータ(β)の2乗と市場ポートフォリオのリスクの2乗を掛けて出来ているのですが、市場の動きσM2にその投資がどういう反応をするか(β2)というこのベータ(β)こそがリスク分散の鍵です。
先ほどの円安と円高の話のように一つのシナリオが起こった時にベータが逆方向に動くと完全にリスクが分散出来ます。
しかし、不動産の場合、不動産の市場が悪くなった時に片方は価値が下がり、片方は価値が上がるというのはあまり考えられません。
私が知る限りでは不動産だけでリスクを完全に相殺するような物件を持つというは不可能です。
その為、出来ることというと一つのシナリオが起こった時に同時に同じように価値が大きく下がるような事態を避けるようにするということです。
例えば、所有するエリアを分散させるとか、間取りのタイプを変えるとか、国内だけでなく海外不動産も購入するとかの方法が考えられます。
また、不動産だけで考えるのではなく、株などの値動きの大きいものや値動きの小さい債権などの併せて持つなど、一つの投資で運用するのではなく、複数の種類の物件や投資の種類に投資していくことです。
複数の種類の投資を行うと、他の投資をやったから見える不動産投資の良さや不動産投資をやっているから見える他の投資の良さも見えてきます。
投資を分散させるために複数の物件や種類を検討する時には、一つのシナリオに対して、ポートフォリオに既にある投資と、現在検討している投資がどのように動くのかを考え、別の方向に動く、方向は同じでも動く幅が違う投資を組み合わせて行くことで、リスクの分散をさせていきます。